熊野古道・大辺路を歩く


2005/4/12〜14                                       北摂分隊


 昨年7月に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」は昨今脚光を浴び、主な
ルートが整備されている。中辺路、小辺路、伊勢路と違い海沿いを通る大辺路は風光明媚
なルートで人気があったと言う。 熊野三山に至る路は江戸時代に「蟻の熊野詣」と云われ
たほど往来があったと言う。京や江戸から熊野に幾多の人々を向わせた深山幽谷の路は、
如何がだったかと体験する事にした。

 コースは初日に長井坂古道、翌日に峡谷の散策、三日目に富田坂古道を歩く予定で出発
した。あいにく初日は小雨に遭って車で周参見海岸を見て終わった。 各地のえびやカニを
集め水槽で展示した”エビカニ水族館”は有名人のサインも多数あり人気の程が伺えた。

*長井坂古道・周参見から見老津*

<周参見>
 すさみ町は白浜と潮岬の中間に位置し、リアス式海岸に沈む夕日がことさら美しいと言
われてる。国民宿舎は絶好の位置にあるが、残念乍ら小雨で拝めなかった。漁業が盛ん
でケンケン釣りという珍しい延縄式の漁法が今も伝わっているそうだ。夕食の刺身は絶品
で、他にも盛り沢山の料理があって食べきれなかった。


<西浜>
 翌朝早く宿を発ち「長井坂の古道」へ向った。初めは海岸沿いの国道を歩き白島トンネ
ルの入口から山に入る。 馬転坂という下り路からは朝日に映える海岸線がくっきりと見
え、真新しい案内板が建つ西浜に着いた。 そこからは田んぼの脇を抜け「タオの峠」を
越え、廃校となった学校に時代の流れを感じた。

 

                    (西浜バス停横)


<和深川王子神社>
 棚田に農家の人が数人出て代かきの最中だったが、ここにも若い人の姿は無い。部落の
中央には和深川王子神社があり、京から熊野まで王子に参内しながら脚を進めた歴史の跡
に触れる事ができた。 一年前に大阪から移り住んだと言う人が狭い境内を掃除していた。

 

                    (和深川王子神社)


<長井坂>
 集落の東端からいよいよ山道に入り、急なジグザグ坂を登ると展望の開けた処に出た。
地主の協力で木を切り開き、ロープが張ってある、枯木灘と呼ぶ海が一望できた。そこか
らは右手に海を見ながら、痩せ尾根みたいになった土手状の径を進む。段築と呼ぶそうだ
が、人の手を入れて歩き易くしたのかもしれない。備長炭の材料にもなるウバメ樫や楠木
など海岸性の木々が春の光の下で新芽を出し、海風に包まれて快適に歩けた。


<見老津>
 海抜300m の坂上から下りきった処には無線設備の建物があり、メインコースも終わり
となる。見老津の駅も眼下に見え、時計を気にしながら早足で降りた。 無人駅と国道と
海岸が並び、真夏の賑わいを想像しながら予定の列車を待ち、隣駅の周参見へ戻った。
 ここまでの長井坂コースは山と海の両方の空気が吸えるので快適だった。

             === 古座川峡の風景 ===

 

              (桜100選の七川ダム堤は桜が満開)

        

       (魔物が噛み付いた一枚岩に悔し涙が流れているとか・古座川)

 

        (999壷を掘った滝の拝太郎の民話が残る・古座川町小川)



*富田坂古道・紀伊富田から安居(アゴ)の渡し場跡*

<志原海岸>
 前日に夕日を期待して海岸に出た、千畳敷と呼ばれるような石畳が海に突き出ている、
大きな太陽が段々小さくなり海のかなたに沈んでゆく。 何も遮るものがないので海岸の
岩や木々がアクセントを付け、風景写真には絶好の場所だった。
 昨年オープンしたばかりの”リバージュ・スパ日置川”は海岸の脇にあり、全ての部屋
から海が見える位置にあった。


<草堂寺>
 朝のバスで紀伊日置駅まで行き、二つ隣の紀伊富田駅に降りた。そこがコースの出発地
点で、近くの店で弁当を買い最初のポイントの草堂寺まで民家の間を歩いた。角々から朝
の挨拶が掛かる、古道に来る人が増えて活性化しつつあるのかな?
 お寺は翌日からの秘宝展を控え準備中だった、禅寺だが円山応挙や長沢蘆雪の絵があ
るので有名だそうだ。尤も貴重な絵は通常は和歌山市の美術館に貸し出されているそうで、
保守などの工面が大変だと関係者が嘆いておられた。

        

                 (草堂寺・白浜町富田)


<七曲りの富田坂>
 お寺の横の石畳を登りいよいよ山に入る。林道から急激な坂をジグザグに上がり、右手
に白浜が見渡せる処で一休みする。さらに進むと椿の大木が赤い花をたくさん付けている。
 富田坂茶屋跡には割れた臼が転がり、石垣が苔むしていた。1919年までは人が営んでい
たそうだ。


<安居辻松峠>
 昼食タイムに峠に着く、JR椿駅に分岐する広い三叉路になっていた。側には顔が削がれ
た地蔵尊があり、焦げた松の幹が横たわっている。 (1943年に山火事で燃えたそうだ)
この付近が富田坂の最高地点(約410m)で、程なく林道と合流して一部は舗装道もある。
向かいには立派な杉やヒノキが整然と伸びた山が見渡せる、転落防止用なのかネットも張
ってある。

 
<祝の滝>
 林道を下りきった処に滝への分岐があり、片道一Km上がると滝と水音に会えた。 分岐
地点に戻り川沿いに下る、途中には梵字塔や庚申塔が建っている。 炭焼き窯の跡もあり、
一箇所のみ備長炭を焼いていた。やがて三ケ川バス停に出て安居集落を抜けると、日置川
に至る。


<渡し場跡>
 その昔は対岸に渡り、仏坂を登って周参見に向った場所だそうだ。新しい道標が一本立
ち、桜の苗木に数個の花がある。動けないボートも川原に置いてあった。 これから古道の
名所にしようと言うのだろう。
 駅前で会ったタクシーに迎えを頼み、宿の駐車場まで戻った。 タクシー利用者が少なく
採算は採れないが町が支援しているそうで、運転者も先日から再就職されたとか。

 春の二日間、往時の賑わいを想像しながら古道を歩いた。海岸線と緑の山々が連なる路
は気持ち良かったが、過疎と自然の調和を喜んで良いのか複雑な思いもした。(崎田記)


 

               (渡し場跡・日置川町安居)


*コースと時間*
<4/13日>周参見(国民宿舎6:50発)→白島トンネル入口→馬転坂→西浜バス停→タオ峠
 →小学校跡→和深川王子神社→長井坂西口→見返り展望台→松林→県道合流→
 長井坂東登り口→JR見老津駅(11:11発電車で戻る)
:行程約11Km

 午後は周参見町の雫滝から七川ダム、古座川峡、滝の拝、潮岬・大島を周回した。(上田さん運転)


<4/14日>宿所発8:12バス→JR日置駅8:55発→紀伊富田駅→Aコープ立寄・弁当調達→
 草堂寺→七曲(富田坂)→峠の茶屋跡→安居辻松峠(昼食)→林道合流→祝の滝
 分岐→祝の滝→梵字塔→庚申塔→三ケ川バス停→三須和神社→渡し場跡=タクシ
 ーで宿所に戻り入湯(16:30)
:行程約16Km

=====================================