2003/9/17〜19 KKNUTS:アルプス遠征隊
北アルプス表銀座を歩く
今年は天候不順の冷夏で、9月になり高温が続いた。 2ケ月の間好天を待ち望みいよ
いよ常念岳・燕岳の縦走に出発した。 新大阪駅に6名が集合し、車2台で名神・中央道
を走り、予め頼んだタクシー会社の駐車場で登山スタイルに着替えた。 豊科町から一ノ
沢の登山口までタクシーで30分ほど上り、漸くアルプスの懐にとりついた。
<一ノ沢から常念小屋>
登山口に着いたのが12時半、これから4時間半の上りの行程を考えると、やや遅い出発
となる。 今日のナビゲーター(崎田)を先頭に歩きはじめる。
台風一過のためか沢の水量が多く水の音が快い、林間の香りも清々しい。 日帰りで
もう山頂から下ってくる人も多い、行く先を見上げたが雲がかかり尾根すら見えない。
しかし常念小屋で生ビールを飲んできたと言う話に元気づけられ、予定時間より早く中間
点を過ぎた。(14:00にあと2.9Km、すでに2.8Km地点で休憩)
大きな石やゴツゴツ岩のガレ場を何度も横切り、胸突八丁にかかる。先頭と殿の距離も
出てきた、最後の水場で給水し、急登にとりついた。大きな山はこれでもか、これでもかと
言うように上りが続く、ザックの重みが肩にぐっとくる。途中で何度も休み、雲間の山腹に
木の柵を見つけ、小屋まで近い所に来たことが分かる。
夕方5時半、霧で薄暗くなった常念小屋に到着した。 上りばかり、高低差1200mを予定
通りに登ってきた。 常念岳の大きな裾野に導かれてようやく主脈に立った。
小屋での夕食には皇太子が泊った記念日とかで、カンビールのおまけが出た。 満ち足
りた気分で疲れも軽くなり、明日の好天を期して眠りについた。
<早朝の北アルプス>
二日目、霧が立ち込め、小屋の窓から槍ケ岳が見え隠れする。 スーット現れては霧に
閉ざされる穂先、手の届きそうな北アルプスの主が荘厳な朝を演出してくれた。
出発時刻には朝霧も去り、槍から穂高まで連なる主脈が直ぐ隣の西尾根に全容を見せて
くれた。 今日はこの眺めを左に見て北上する予定だ、ナビゲーター(上田)を頼りに出発。
<常念岳山頂>
6時20分南に聳える山頂を目指して歩き始める、風化した石ころ路や剥き出しの岩を跨ぎ
ながら登る。 樹木は全くないが右手に槍・穂高の朝の輝きが見えるようになった。 何度も
止まってシャッターを押す、感動の連呼!! 槍から南岳、大キレットを眺望し北穂、奥穂、
前穂と目で辿れば自分がそこに居るかのように思える。 時間よ止まれ! とも思えた。
山頂は狭く岩峰になっていて、蝶ケ岳方面には急な下りが見える。他のパーティーと交替
で記念写真を撮る。 苔むした岩盤にピッタリ貼りついた”イワギキョウ”の紫が朝陽に映え、
2857mの険しい頂上で自然に立ち向かう花に尊ささえ覚える。
(朝日に映える槍ヶ岳〜大キレット)
<大天井岳>
常念山頂では20分ほど過ごし小屋に向って降りた。 後の長い行程を考えると余裕もなく、
ザックを整理をして9時前に燕岳への縦走を始めた。小屋から北に樹林の路を抜けるとザラ
ザラの尾根路になった。目指すは大天井岳だが、横通岳の巻路を過ぎるとアップダウンの
長い路が見えてきた。 あの先にあるのが東天井岳だろうと皆で話しながら進む、鞍部から
青々した路が見えた、お花畑を過ぎ”東天井頂上”が近くに感じられた。
しかし登りつめた処は山頂でも何でもなく、遥かな先にまた新たな山頂が見えてきた。
勝手な想定に落胆し、騙された錯覚さえ覚え、何度もアップダウンをやり過ごした。
漸く東天井岳の下に着く、逆に常念岳に向うパーティーにも出会う。 互いにエールを交わし
て去って行く、山歩きの風景でもある。
西の方を見れば槍ヶ岳の北に小さな角のような尖端が見えるようになった。周りの槍ヶ岳
山荘やヒュッテも肉眼で確認できる。 やや雲がかかり始め、穂高方面は完全に雲のなか
朝の絶景は「値打ちものだった」と、中山さんの口癖に皆が満足の自己贔屓。
幾つかの山頂を巻き、あの”騙し”を数回覚え、漸く大天井岳(2922m)下の山荘に到着
した。 ここで昼食を摂る事にして、運んできたガスコンロで水を沸かし、お腹を満たした。
山頂は広く、何度となく勝手に錯覚した本物の大天井岳には憧れさえ感じた。 ここまでの
道程を含めなんとも奥深い山容だった!
都合悪く同行できなくなった仲間に携帯メールを発信、そこにある槍ケ岳を見せたかった。
(大天井岳から見る縦走路)
<燕山荘>
大天井岳付近は気温17度、汗もかかずに歩けた。13:30お昼を終えて出発、石ころ径を
槍ヶ岳方面との分岐点までググ−ット下りた。切り通しの側には喜作レリーフがウェストン
と共に岩にはめ込んである。鎖場を攀じ登り縦走の尾根コースに上がった。 遥か彼方に
燕の山容を探すが、見当たらない。コースタイムは切り通しから2時間とある、明るいうち
に着けると安堵した。
午前と違って岩山をぬったような悪路があり、大きな下りもある。径が細くて間違ったか
とも思えた。 蛙岩と言う奇岩に達したら既に予定の2時間が過ぎている、やや不安にか
られ、近くなった燕岳を眺望しながら歩く。 今日の目的地はホンマに遠いと感じた。
夕方17:20に燕山荘に到着した、燕岳は更に北にあり、もう夕闇が迫っている。1921年
に開設された由緒ある小屋に無事に入った。 幸い人が少なく、加藤、近藤の女性陣は
占有のスペースで泊れる事になった。
小屋のオーナーはアルプホルンを奏でる人で、食後にはビデオでお披露目があった。
わがパーティーはその横で生ビールや焼酎で一日の疲れを癒した。
(大天井岳から燕山荘を目指す)
<燕岳>
三日目、金色の太陽と黄金色に映える雲に出逢えて朝を迎えた。朝食を済まして燕岳
に向う、最終日のナビゲーター時森さんを先頭に花崗岩のザラザラ路を進む。
山頂は風化して丸みをおびた岩がオブジェのように並び、10人も座れない処だった。記念
写真を撮って強風の燕岳を後にした。 往復約1時間で小屋に戻り下山の準備をした。
(燕岳山頂)
<合戦尾根を下る>
7時40分ザックも軽くなって山を降りることになった。下り3時間予定、昨日の11時間の
行程を考えると足取りも軽くなる。
合戦小屋で小休止、この先からは大木の根っこを跨ぎ、ジグザグを繰り返しながらの歩行
が続いた。 途中の富士見ベンチでは残念ながら姿は見えなかったが、樹林の中を予定
通りに下りた。 このコースは北アルプス三大急登の一つで、上りは4時間強とある。
全員無事に縦走を果たし10時30分に全行程を締め、仲間と三日間の好天に感謝した。
<温泉と美術館>
下山した中房には秘湯があると云う、近くの温泉に向い”表銀座”の疲れを流した。予約
のTAXIで豊科町の駐車場に戻った。 昼飯は蕎麦を食べようと時森さんが知っている店で
おいしい蕎麦とテンプラを食べた。 皆な三日ぶりのご馳走で満腹になる。
ついでにチヒロ美術館に向う、折角来たが大阪に戻る時刻が迫った。 受付に頼み込ん
で、入場料なしで土産コーナーに立寄る。 本物のチヒロ作品は次回の楽しみに残し大阪
を目指して帰路についた。
<補遺>
今回は山歩楽会の仲間6名、平均年齢62歳、事故も傷も無く皆な無事に踏破できた。
また二台の車で大阪・豊科を往復、TAXIや小屋の費用も含めて一人@29,700円だった。
健脚と元気の基は毎月の例会での訓練にあると確信した。 (崎田記)
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