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2003/6/21

            祖母山と大山レンゲ               与作

 

 奥深い山域にある祖母山に登った。北に九重火山、西に阿蘇火山、南に霧島火山

等九州の有名な山々に挟まれた地味な山である。 深田久弥は百名山で「品のいい

つつましい山」と紹介している。昔は九州本土で一番高いとランクされ、W.ウェストン

も1890年に登ったと云う。

<鉱山跡>

 今回は高千穂の天岩戸神社を通り、県界の峠を越え、尾平青少年旅行村に前泊

した。梅雨の最中で泊り客は自分一人(定員52名)だけだった。

尾平鉱山は室町時代から発掘が続き1955年閉山になるまで、銀や銅、錫を産出

したそうだ。 廃鉱になり約半世紀、人も少なくなり小中学校跡地に立派な宿舎が建

っていた。 山あい深く、祖母連山を西に見る絶好の地に、ひっそりと在る。

 前日の午後に着き、散策した。 鉱山から出た茶褐色の小石がうずたかく積まれ、

今も坑道から出る地下水を流す水路やパイプ、変電設備があり、古い鉱山の息遣い

を感じた。

<尾平から黒金山尾根>

 早朝6時に尾根を目指して出発した。川上渓谷沿いに登り縦走路に出会うルートだ。

途中の渓谷は台風一過の激流と一枚岩の滑(ナメ)が連なり目を楽しませる。

高度800m辺りから急登が続き1200m付近からは栂や樅の常緑樹が手付かずの

まま聳えている。時折樹木の間から山稜が見えるが、笹や新緑に遮られ俯瞰はでき

ない。このルートには100m毎に高度標識があり、地図と合わせて自分の位置が判

る。単独登山に安心感を与えてくれた。

 漸く天狗岩が見え、その下にある岩屋、水場に達し持参した水と入れ換える。程なく

視界が開け祖母山頂や周囲の山が一望できる場所に達した。(天狗の分れ)

ここまで3時間(ネットの歩行時間2:40)の上りで高度差940mだった。 対向者も

同行者も無く、谷川の音と鳥の声だけがこだました。

<祖母山頂>

 天狗岩を目指して少し登る。先ほど見上げた岩の尖端近くに達した。最後の岩の

上には、ザックを置いて恐る恐る登る、バランスを崩せば絶命する処だ。 30分の

ピストンで元の「天狗の分れ」に引き返し、南稜から祖母山頂を目指した。

 頂上下はハシゴや鎖がありザラザラの岩肌をよじ登る、対向者にも初めて出会

った。 分岐から一時間(高度差230m)で山頂に、そこには古びた石の祠が座り、

中高年ばかり5〜6人が食事中。 私もコンロを点火し、約50分の食事休憩。

 梅雨の合間をぬって上空は晴れ晴れ、遠く九重、阿蘇がかすみ、尾鈴山、市房

山が眺望できる。水蒸気が多くそれ以上は見渡せないが、360度の山並に満足

する。 つかの間の好天に”アリガトウ”とつぶやいた。

 

           南側の天狗岩から見る祖母山頂(1756m)

 

<花に出逢う> 

 今回は大山レンゲの花に出逢えることを最大目標にして登ってきた。九合目小屋

付近は大勢の人がカメラの放列、大阪からの団体や北海道からの登山者もいた。

 この花は白い花弁の中に黄緑の芯とピンクのガクがあり、近づくと濃厚な甘い香

りにクラクラしそうだ。 中国名を”天女花”と云うそうだ。

 一帯は3〜5m位の木々が集まり、無数の花をつけている。 今日この山で旬の

花に出逢えた。いつまでこの環境が保たれ、登山の楽しみを残して欲しいものだ。

 

         そこにある 大山レンゲ 香は遥か  (祖母山九合目にて)

 

<下山>

 帰路は馬ノ背、宮原を通り駐車場の旅行村へ下る。馬ノ背からは祖母山、天狗岩、

古祖母の連山、奇岩が一望できた。 残り少ないミヤマキリシマ、紅ドウダンなどが

疲れを癒してくれた。

途中一人の登山者に会い、3時間で降りた。全行程8時間半の山歩きを無事終えた。

 

              馬ノ背付近に咲く紅ドウダンツツジ

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