南ア・塩見岳に登る
2005/8/19〜20 与作
本州中央部にある南アルプスは、フォッサマグナ断層の上にあると云われている。 塩見
岳は北岳や甲斐駒、仙丈岳の雄峰が見られる北部地域より南にあり、南部の主峰赤石岳
や聖岳との間に位置している。
夏のアルプス登山にと、塩見小屋に一泊して山頂をピストンする事にした。 経験者の記
録がネット上に沢山あり、情報は入手し易い。 塩川沿いのルートよりも一時間ほど短い
鳥倉林道の豊口ルートを選んだ。 ただ林道の状況や分れ道について役場にメールで問合
せしたら、返信と登山口までの略図が届いた。 大阪から深夜に走行し、2日間の行程で、
予報も曇・晴れと好天したので出発した。
塩見岳東峰 3052m |
<鳥倉林道>
松川町から小渋ダム沿いを抜けて大鹿村へ、早朝の林道へ取り付いた。小石も転がって
いるが、完全舗装の立派な道だ。 村の役場から20キロ山奥の駐車場まで座って行ける
この山路は、昔の旅人達には想像もできない、豊かで効率的な国・日本のしるべみたいだ。
7時に着いたが50台止めれる駐車場は満杯状態、出てゆく車の後に入って何とか第一
段をクリアーできた。 高度はここで1630mとある、登山口までは更に舗装道を40分程歩
き、塩見岳へと踏み出した。
<三伏峠>
いきなり急坂が始まり、50分歩いて10分休むペースで霧の深い径を辿る。 苔むし
た倒木の横には丸太を組んだ橋もあり、緊張が走る。ガスで下が見えないので都合が良
い処もある。登山口から4キロ3時間とあるが、30分余計にかかって峠小屋に着いた。
さんぷく峠は日本で最も高い位置(2615m)にある峠だそうで、昔は伊那からここを通り
大井川の上流へと下ったそうだ。小屋の前で昼食の弁当を食べ、いよいよ尾根筋に向か
った。
同行のFさん |
小屋は標高2760mに在る |
<本谷山2658mのお花畑>
小屋の下で荒川、赤石方面の縦走路と分れ塩見小屋方面へ進む。標準では3時間20分
かかる予定だが、ゆっくりしたペースを守りながら霧深い径を歩く。 小雨も降り始めたの
で、雨具を着ける。 三伏山から尾根径になるが、正面に見えるはずの塩見山頂も何も見
えない。 アップダウンを繰り返し本谷山の下に着いた。
そこはお花畑で白、紫、黄色、ピンクの各種の高山の花が咲き乱れていた。平地から見
れば季節を先取りしたリンドウ、夏が永くなったようなタカネナデシコなどなど、別世界には
思わず足が止まる。 周りの峰々はガスで見えないが、埋め合わせ分には余りがでた。
*** 花の写真をクリックして見て下さい → Go FlowerGarden ***
<天敵の雷>
本谷山を越えた下りの木々の間に花輪が置いてあった、三年前に落雷事故があったそう
だ。今回は柄にもなく首にチェーンを下げてきた。 落雷に遭った時身に着けた金属に電流
が流れ、その分人体を流れる電流が減り、助かる確率が高まると言う。
立ち枯れの林が長々と続き、水の無い権左衛門沢の上を跨いだ。 本谷山から二時間が
過ぎて小屋も何も見えず、案内板もない。 降りる人もいなくなり、気持ちに焦りが出てくる。
そんな時に岩径にさしかかった、もしかしたら路を間違えたかとも考えられ、地図を取り出
して調べる。 塩見新道との合流地点が確認出来たので、このまま進むしかない。
<塩見小屋とイギリス軍人>
漸く小屋が見えると安堵感が出て、疲れも和らいだ。 登山口から8時間が経っている。
早速手続きをしたら、30人定員の最後の組になった。 狭い稜線の一隅は凡そ2760m
に位置し、小屋は小さくて予約外の人は更に小さなテント張りに泊ることになる。
五時の夕食が始まる頃に、男女10人程の外人が現れた。 予約なしだが泊めて欲しい
様子だ、小屋の即席ラーメンを買って外で座になって食べ始める。 こちらは中で温かい
味噌汁を吸った。 手持ちの焼酎を外人と一緒に飲み、カタコト英語で話が盛り上がる。
彼等はイギリス陸軍の隊員で訓練の一環で日本に来たという。 この日は北岳から縦走
して塩見小屋まで来たと英文の地図を示した。先ずは驚く、10時間以上の行程だ。
更に20日間の訓練で黒部から富士山まで登る途中だと言う、クレイジーだと言えば笑顔
が返る。 自分の脚を出して比べたら、相手の方が太かった。 お互い明日の安全歩行を
願い「Good Night !」で終宴した。
ブロッケン現象 |
西峰 |
<山頂での感激>
真夜中は満月でガスも見えず、晴天の模様だったが、夜明け前の小雨でふたたびガスの
中で朝を迎えた。 わずかに北東の方角が赤らみ、卵の黄身みたいな朝日を迎えた。
長い道のりを辿ってきたので引き返すのも残念だ、雨が落ちない様子なので、勇躍山頂
を目指して5時半に小屋を出発する。
ハイマツが終わり奇岩の天狗岩に着くが、ガスは消えていないので、北斜面のバットレス
(大岩壁)は見ることが出来ない。 少し下った鞍部からも山頂は見えないが、高度計からは
残り約100mの岩場を登る事になる。落石の危険もあるが、濡れた岩場を三点支持、四つ
ん這いでよじ登る。
岩場を越え、小さなお花畑が現れ、なだらかな稜線を進むと、三角点のある西峰に着い
た。 霧も少しは薄くなるが、眺望は叶わないまま、5メートル高い東峰に向かう。 五分位
で塩見岳の最高地点3052mへ到着した。 同じ時に居た人々と握手を交わし、雄たけびを
あげる。
突然朝日に照らされた霧の中に人の姿が、手を振れば霧の影絵も動いて応える。ブロッ
ケン現象に感動して何度も手を振った。 そして周りの霧がスッと去り、青空も覗く、次の
瞬間には再び霧が覆い二つの峰しか見えなくなる。 大自然の幕引きやアンコールで現れ
る夏山の絶景に畏敬の念を抱いた。 (Stayed at
Mt.Siomi 7:00〜7:30am/05/8/20)
南アルプス連峰は遠望ならず |
山頂西峰 (後方は東峰) |
(コースと経過時刻/10分以内の休息を含む)
一日目: 駐車場発(am7:15)=大鹿登山口(am8:00)=(am11:30)三伏峠着/昼食後発
(pm0:10)=本谷山(pm1:30)=塩見小屋着(pm4:00)...歩行約8時間
ニ日目: 小屋発(am5:30)=塩見岳西峰着(am7:00)=東峰発(am7:15)=(am8:30)小屋着
/小屋発(am8:55)=(pm0:20)三伏峠着/昼食後発(pm0:50)=登山口(pm3:00)
=駐車場着(pm3:45)...歩行約9時間
∽∽∽∽∽∽ ∽∽∽∽∽∽
Ret.
to Top-page
∽∽∽∽∽∽ ∽∽∽∽∽∽