以前から登りたいと思っていた綿向山に行った。 北西にある竜王山から縦走するコース
には思わぬ難所があり、山頂からは雨乞岳、鎌ケ岳などの鈴鹿の南の主峰が一望できた。
山の高さにちなみ11月10日、日野町では「綿向山の日」が制定され毎年イベントが催さ
れるとか、人々に親しまれている証しだろう。
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左に竜王山、右に水無山を従える綿向山 (農業公園ブルーメの丘付近にて)
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<西明寺>
蒲生郡日野町は戦国武将の蒲生氏郷(信長の娘婿)の生誕地としても知られ、また近江
商人が数多く排出した土地でもある。 綿向山・竜王山の麓に位置する西明寺部落は名刹
西明禅寺を守り山と田園の暮らしが漂う所だった。
西明寺口のバス停を右折、御幸橋の側に登山者用の駐車場があり、7台程が止まってい
た。バス路を歩いて奥に進むと、突き当たりに西明禅寺がある。住職に聞いた登山口への
近道は薪を積んだ隣の家との間を入る急な径だった。
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西明禅寺
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登山口からは急坂
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<竜王山>
踏み跡も薄い近道を上がると舗装された林道に出て、竜王山登山口の標識から径を上がる。
傾斜のきつい細い径は枯葉が多く注意しながら進む。 程なく千畳平に出る、大昔の寺の跡が
伺えると言う。さらに急な階段を登りきると山頂に出くわした。
西側は樹木で遮られ琵琶湖は見えないが、南には綿向山や裾野が望める。誰かが捧げた
一升瓶が風雪に晒されていた。
山頂からは東に分け入り数回アップダウンをやると送電線の巨大な鉄塔に遭う。眺めが良
く、これから登る綿向山や赤い屋根の小屋も見れる。雲が多くなり風も強く、木枯らしの到来
を思わせる。
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竜王山山頂には芝がある
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竜王山から綿向山への尾根筋の分岐
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<急登>
やがて細い岩尾根の917mの標識に至る。目前に迫ってきた綿向山の下の急登について、
反対から来る3組の人に状況を聞いてみる。 皆な大変だと言う、大雑把にはこれから三段
くらいの急な上り・下りがあるとの話だった。
綿向山頂までは一時間以上もあるので、気が重い。 国土地理院地図では標高840m迄
下がり、1080mの雨乞岳への分岐まで上り、尾根径を進み1110mの山頂に至る。 差は
300m弱だが三段もあれば2倍近くの高度を上下することになろうか?
いよいよ急な上りが始まり、ロープや小枝をつかんで登る。 小さい笹の急坂にはロープも
無く、ついにストックを持ってよじ登る。 すぐに先が開けてきて尾根筋に辿り着いた。
東は雨乞岳へ続く笹の径、西には綿向山が見れる。 木々で見えなった主峰を目の前にし、
やっと来たかと思える瞬間だ。 少し歩くと”幸福のブナ”の看板があり、側には雪の重みで
枝が垂れ、更に成長した珍しいブナが生えている。湾曲した幹をくぐると良い事があるとか。
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”幸福のブナ”
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手前の雨乞岳と鎌ケ岳の鋭鋒
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<綿向山>
12:40山頂に到着、来月の綿向山の日を控え、清掃や補修をするボランティアが沢山おら
れ、昼食を終えた組もいる。新しそうなベンチに腰を据え、目の前に広がる山並みをご馳走に
して弁当を開く。
空気が澄んでいるとアルプスや御嶽山までが見えると言うが、残念ながら東の雨乞岳、鎌
ケ岳くらいしか明瞭には写らない。広い山頂は昔からの祠と大きなケルンが建っていた。
下りは途中で表参道と水無山コースに二分されるが、今回は表参道ルートを辿った。ブナ
林の中を下ると”行者コバ”に出会う。ここからは径も広くなり参道らしくなる。五合目に赤い
屋根の無人小屋がある。
ヒノキ林の中をジグザグに何度も降りると、岩がむき出しになった”接触変質地帯”と言う
看板が現れる。接触岩は貴重な鉱物研究の素材で天然記念物だそうだ。大きな堰堤の側
へ降りて進むと、出発した駐車場に戻った。
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綿向山山頂
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行者コバ
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赤い屋根の無人小屋
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天然記念物の接触岩
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<コスモス>
西明寺では稲を刈った田んぼの水路を農家の人が補修していた、これから迎える冬に備
えてのことだろう。
帰途に立寄ったブルーメの丘近くでは休耕田にコスモスが咲き誇り、大地はあでやかな花
のタイル模様になっていた。
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