市房山と西米良村         2003/12/7

                                     与作

 

 前々から登りたかった市房山に脚を運んだ。宮崎県と熊本県境の秘境(昔々)の地にあ

る。西米良は淡路島の半分位の面積(272平方km)があり、人口は約1,500人の広大な村

である。

<九州の屋根>

 200名山に名を連ねる市房山を宮崎県西米良村からアクセスする事にした。熊本側の

水上村にある市房神社から登るルートもあり、こちらは短時間で山頂に着ける。

 西米良は山奥にあり、平家落人で有名な椎葉村は北隣り、熊本の五家荘にも近い。 村

は一ツ瀬川のダム開発で一躍開け、今は立派な道路が山間を縫い九州一のダム湖と山肌を

結ぶ橋が景観をなしている。車も快走でき、ワーキングホリデーでも有名になった処であ

る。

<市房山>

 前日に「米良の里」と言う立派な宿所に泊った。以前小学校だった場所に建てたそう

で、村の委託で運営されているそうだ。夕食には鹿の生肉やゆずの中身をくりぬいた酢

の物もでて、この土地の味を堪能させてくれた。

 朝の7時に宿を発ち、村所ダムの先にある登山口から山径に入った。(7:30) いきなり

直登に近い上りが30分ほど続き、工事中の林道に出くわした。 その後は大きな起伏もな

く7合目の造林小屋まで到達できた。

茶色のさらさらした落ち葉を踏みしめながら歩いていると、突然目の前を二頭の鹿が駆抜

けた。房々した白い尻毛が目に残像として残った。相手もこんな時間にとビックリしたに

違いない。

         ”山を踏む 目より駈けだす 鹿二頭”

         

 8合目辺りからは原っぱ、熊笹、岩径と変化のある行程が続き、山頂に到着した。

(11:20) 登山口から高低差1400メートルを4時間弱で登った事になる。木々の霧氷が

快晴の山頂を美しく演出し、この冬初めての体験に感激した。

熊本県側の市房ダム、湯前町の盆地が見渡せるが、西側は険しい断崖になり、北からの風

で手がかじかんだ。山頂から少しの処ある「心見ノ橋」を見に降りた。大岩のキレットの

間にクサビ状に別の岩が挟まれいる。見事な自然の造形に息をのむ。肝試しに歩けるが片

側は絶壁で死人もでているとか、写真に収めて下山を始めた。(12:15)

 同じ道を下るが朝とは違い、市房山がくっきりと山容を見せてくれた。周囲の峯峯に比

べてより大きな裾野、場所により双丘に見える姿にはため息がでた。

 

市房山(1722m)の山容 (南東側から)

山頂での霧氷

心見ノ橋(向う側は絶壁)

 

<温泉と今年開通した木造車道橋>

 下山の途中で珍しい昆虫を見つけた、20匹ほどが重なって裏白の葉に留まっている。

名前は判らないが温暖な斜面で越冬するのだろうか、真赤な羽に黒い斑点、ピカイチの

アートだった。

 帰りに「カリコボーズの湯・ゆた〜と」に行き、市房山の想い出に浸った。”カリコ”

とは「勢子」「狩子」に由来し、ちょこっといたずらな「坊主」を合成した名だと言う。

狩猟生活や山や川の神に畏敬を込めた粋な名称である。 ”ゆた〜と”は土地の言葉で

「ゆったり」を意味している。この日は、ほおずきの袋に豆電球を灯したXマスツリー

が飾られていた。温泉には露天、サウナなどもあるが、一ツ瀬川のせせらぎを聞きなが

ら入れるので、いっそう趣がある。

 温泉の近くには木造橋があり、橋脚を除いた部分に多量の杉材が使われ、ニ車線で全長

140メートルは日本一だそうだ。都会からこの村に休暇を利用して滞在してもらい、民泊

しながら村人の仕事も手伝うワーキングホリデー制度もある。貴重な体験を得て観光PR

もしてもらうとか、黒木村長のアィディアマンぶりが伺える。(国土交通省の観光カリス

マ百選を受賞)

<ゆったりした時空>

 村の中心部の村所から上流は一ツ瀬川の本流が続き、川底の岩を清流がゆっくり流れて

いる。猟犬の声が山に谺し、川の幅は100メ−トルを超え、川筋の路を自分一人だけが歩い

ていた。 こんな悠々とした自然の中で人はもっと大きくなれるのだろう。

 

日本一の木造車道橋(2003/4開通)

”米良の里”保養所

越冬中?の昆虫(名が判明

 

[市房山までの往復時間](小休止を含む所要分数)

宿所”米良の里”→(30)登山口→(60)林道出合→(60)造林小屋→(110)山頂

→(5)心見ノ橋→(5)山頂→(135)登山口

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