ほうおうさんざん

鳳凰三山

2008/10/26〜27                                                          崎田信義(記)

 吹田→名神・中央道〜JR韮崎駅(5時間)〜JR甲府駅〜南アルプス温泉ロッジ(泊)〜夜叉神峠登山口
 薬師ケ岳 2780m、 観音ケ岳 2840m、 地蔵ケ岳 2764m

 南御室小屋、薬師岳小屋、鳳凰小屋

 登山口→夜叉神峠→杖立峠→苺平→薬師岳小屋→観音岳→地蔵岳→鳳凰小屋→白糸滝→青木鉱泉
 初日;夜叉神峠登山口5:50出発(70分)夜叉神峠・朝食20分<85>杖立峠・休憩15分<110>苺平・
     休憩10分(45)南御室小屋・昼食35分12:20発(80)砂払岳(15)薬師小屋着13:55

 
翌日;薬師岳小屋6:00出発(10分)薬師岳(30)観音岳(65)休憩15分(25)アカヌケ沢ノ頭(10)地蔵岳
   (45)鳳凰小屋・休憩10分9:30発<50>五色滝(35)白糸滝(35)昼食25分(140)青木鉱泉14:15着
       記号( )
ポイント間は分単位表示、 記号<>ポイント間で10分程度の休憩を含む

 

   地蔵岳のオベリスクは中央線の車窓からも視認できる特異な尖塔である。今回は実地で
  見たいと二人で縦走コースに挑んだ。南の夜叉神峠から入り、北へ三山を辿り青木鉱泉に
  降りる代表的なコースで、16時間強の行程になるので薬師岳小屋に泊った。

   季節がら時雨、みぞれ、強風に遭ったが、晴れ間に見るオベリスクは自然の遺物という
  形容がぴったりだった。花崗岩を積み木のように重ね、その先に大きな岩が屹立するさま
  は神の仕業でしかない。その威容に圧倒され、紅葉真っ盛りの長〜いドンドコ沢を下った。
   

 

<夜叉神峠>

 大阪を発ちその日に峠に登ることは無理で、前泊する事になる。更に下山した日に帰着
するには青木鉱泉発のバス便で韮崎に着く必要があった。ネットで調べると27日のバス便
が今季最終である。
 こんな条件で車を韮崎に駐車して甲府駅まで乗り継ぎ、バスで芦安に向かうことにした。
しかし計画通りとは参らず、駅前の駐車場が満杯、JR電車の時刻も迫ってタクシー会社の
駐車場を借りて何とかタイムテーブルが始動した。(アサヒタクシーさん有難うさまでした)
 旧芦安村(現南アルプス市)の温泉ロッジに15時過ぎに着き、ナトリウ系のお湯に浸かり
翌日の入山に備えた。

 翌朝宿の前から乗り合いタクシーに乗り、5時半に登山口に着いた。薄暗いなかを数人が
登り始めていた。行程は8時間なので、明るくなるまで待機して出発した。

 夜叉とは古代のインド神話に登場する鬼神だと言う、男と女があり森に棲む神霊だそだ。
夜叉神峠の命名は知らないが、山深い奥地ならではの名で、一度口にしたら忘れ難い地名
である。 6年前北岳登山で訪れた時は夜叉神トンネルを車で通れたが、今は規制ができて
一般車の通行は禁止、ゲート前で人が守衛していた。 芦安から広河原・北沢峠を経て長野
県側の旧長谷村・戸台口までがいわゆる南アルプス・スーパー林道だ。

 

夜叉神峠登山口/10.26am5:45

夜叉神峠・1770m/10.26am7:00

 

<季節風>

 久しぶりに重いザックを背負う、非常食、救急薬、ライト、雨具、冬用の長袖シャツ等を詰
めて10キロ超になった。小屋の朝は氷点下になっているそうだ。

 登山口から黄色い落ち葉を踏んで夜叉神峠に向かう。広いジグザグ路を辿りなだらかな
峠に着いた。小屋もあるが人気はなく、広場で朝食のオニギリを食べる。曇天の中ぼんや
りと見える北岳を遠望して次のポイントへ発つ。
 笹の中を一旦下り樹林帯の中をゆるい上りが続く、杖立峠には鉄パイプで組んだやぐら
があり記念写真を撮る。南御室小屋から下る人の話では、みぞれも降っているとか。

 登り始めて5時間経過、苺平に着いた頃には上着も濡れてきたので雨具をはおる。緑の
苔のうえに幼木が立ち、黄色い落ち葉との対比が疲れを癒してくれる。やがて南御室小屋
に着き暖房の効いた中で昼食を摂る。上りコース最終の水場もあり、テント組もいる。

 小屋の北にある急坂を越えると尾根筋に出た。 ガマの岩という巨石もある、いきなり風
が帽子を吹き飛ばす。時雨は止み、時折強風が音をたててきた。北隣にある甲斐駒も南に
ある白峰三山や富士山など全く眺望できないまま、白くざらついた径を辿ると砂払岳に至
り、花崗岩の隙間を踏んで薬師岳小屋に着いた。
 夕食は5時半、同宿する人達とストーブを囲みアルコールを入れて3時間余りをダベリ
ング。中高年同士の気安さで山の情報交換や年金問題など話題が続いた。

 

杖立峠・2180m

苺平・2510m

ガマの岩

砂払岳の尾根径

 

<鳳凰の尾根>

 夜中も強風は止まず隙間がヒューっと音をたてる、8時の消燈までは暖もあり、何とか睡
眠もできた。 夜明け前には満点の星空、三ツ星が等間隔に並び、四隅に明るい星が光る
オリオン座は素人でも判る。

 二日目の朝は霧の中の出発となった。小屋からすぐに薬師岳に着く、台風なみの風と砂
礫の中に櫓が力強く立っている。ここでも眺望ならず、北西へと進む。 明るくはなったがお
日様は雲の中、ざらざらの径をアップダウンを繰り返し観音ケ岳に着く。 三山の最高峰で
標識には鳳凰山と併記してある。風も止まずそそくさと山頂を下る。
 時おり雲の切れ間から見える北岳や甲斐駒もその頂きは雲を抱いている。鋭く切れた岩
場や霜で固まった径を辿り、鳳凰小屋と地蔵岳の分岐に至る。

 7時頃になると雲も去り晴れ間に地蔵岳のオベリスクが遠望できるようになった、縦走の
ハイライトが期待に応えてくれそうだ。3っ4っの岩峰を越えると赤抜沢ノ頭に着く、西に辿
ると白鳳峠を経て広河原へ下れる。


<オベリスク/方尖塔>

 東に下ると”賽の河原”に出る、願いを込めた多くの地蔵尊が立ち厳粛な景観となる。そ
の側に屹立した岩峰を見上げることができる。目線から70m位上か、尖端は二つの花崗
岩が相より天空を突き刺している。ゆるぎない自然の遺物は素晴らしい、とても尖端には
登れない。しばし眺め回してゆっくりと下り始めた。

 

 

観音岳・2840m

薬師ケ岳・2780m (観音岳 on mouse)

北岳を遠望

オベリスクを遠望

赤抜沢ノ頭の霧氷

オベリスクの尖端

賽の河原

地蔵岳のオベリスク (尖端 on mouse)

 

<ドンドコ沢>

 ザレた砂径を下り、樹林帯を更に下ると鳳凰小屋に着く。青木鉱泉と御座石温泉の分岐
点で一休みし、青木鉱泉方面に下る。小屋の親爺が5時間かかると言う、標識には3時間
半とあり、ホンマに?と信じがたい感じがした。(最新版「日本百名山」では4:30)

 2382mにある小屋から1300mほど下ることになる。初めは沢沿いに緩い下りだが、五色
ノ滝の前からは急坂になり、石ころ径になる。落差の大きな白糸ノ滝と連続する。
 何処までも歩きにくい石や根っこの凸凹径が続く。見通しのきく場所から鉱泉の屋根とも
思える青い点が見えたので、岩清水が流れる場所で昼食とする。

 腹を満たして終点も近いと足を運ぶ。やがて南精進ケ滝の展望場所に着く、勢いのある
滝は見事な景観だ。その先には、学生で遭難したのか、両親や仲間が建立した碑がある。
 ドンドコ沢の名の由来は知らないが、険しい下りの連続で、ヤットコ・サットコ降りる感じだ。
左側の絶壁は黄色や緑色の木々が這い上がり、下る先をもみじ葉が埋め尽くしている。

 鉱泉の屋根と見えた物は堰堤工事現場のシートで、更に川沿いを下ることになる。四っ程
堰堤を過ごして漸く青木鉱泉へ着いた。鳳凰小屋から4時間半ほど歩いた事になる。明治
時代から続く鉱泉のお湯で足を伸ばす。

 今季最終日のバスに乗り韮崎駅に向かう、麓に至る迄民家は全く見当たらない。時間表
通りに着き縦走を完了、この専用路線をいつまでも残して欲しいと思った。

 

巨岩の間を落ちる白糸ノ滝

趣のある青木鉱泉

 

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