いわてさん

岩手山

2008/7/9 (曇り)                                                        崎田信義(記)

 大阪・伊丹空港〜いわて花巻空港→(知人宅へ宿泊)→(車で登山口へ移動)
 岩手山 2038m(薬師岳) 

 岩手山八合目避難小屋は管理人がいる、平笠不動避難小屋は無人

 焼走り登山口→噴出口展望台→平笠不動避難小屋→山頂→八合目避難小屋→馬返し口
 焼走り登山口 =06:40出発(100分)噴出口・休憩15分(155)平笠不動小屋・休憩15分(45)お鉢渕
 (5)山頂・昼食休憩30分(25)不動平〜八合目小屋・休憩15分(180)馬返し口駐車場 =16:25着
       
    
 東北を代表する岩手山と早池峰に登り、旬の花を満喫しようとUさんと出かけた。知人の別邸にお世話に
なり梅雨の合間をうかがって登山、毎日温泉に浸かり疲れも溜めずに帰阪できた。

 ”南部富士”とも呼ばれる岩手山は東からの眺めで、小岩井農場のある南からの眺めは”南部片富士”と
も形容されている。山頂の西側は荒々しい山稜を成し、4年前迄は一部のルートは登山禁止だったそうだ。
 東の焼走り登山口から上り、山頂から滝沢村の馬返し口まで9時間の長丁場、花を撮りながら「
ふるさと
の山」を踏破した。中腹には日本最大のコマクサ群生地が続き、大きな巌の山は「言ふことなし」だった。

コマクサ (日本を代表する高嶺の花)

 

<黒とピンク>

 早朝の焼走り口に着く、既に団体ツアーの人が準備体操中、側にある溶岩流の跡を一見
して三人パーティーで出発した。松やもみなどの林が溶岩流の脇に茂り、涼やかな空気で
目が覚める。100分ほど登ると展望台という開けた処に立った、出発時に見た溶岩の跡が
俯瞰できる。緑の木々の間を縫うように黒い岩が噴火時の流れを今に残している。

 火山特有の黒土の径もだんだん勾配がきつくなり、やがて斜めにロープを張った砂礫の
径になり、コマクサ群生地の中に進んだ。 ひと株づつ離れてピンクの駒型の花房を付け、
山裾へ向かってうつむき気味に開いている。径沿いに一キロ弱ほど続き、見上げる向きに
もびっしりと咲いている。日本アルプスも含めて一番広い”コマクサ畑”に出遭った。

 地元紙にも載っていたハクサンチドリがコマクサ群団の中に立っている。 濃いピンクの
花弁は鳥の羽のようにピッと伸びコマクサと対照的だ、山の中で初めて目にした。荒れた
山肌にかくも広いお花畑があるとは想像もできなかった。大自然の配置に皆感動した。

   

 

噴出口展望台から山頂の遠望

コマクサの群生

ハクサンチドリ

コマクサ

 

<緑と紫>

 砂礫の巻きみちを過ぎると白樺などの木々の元にモミジカラマツやミヤマオダマキ等が
見れるようになる。濃い緑の葉っぱに白や紫の花を咲かせ、図鑑を飛び出したように数々
の高山の花がつづく。
 青紫色のシラネアオイに出遭った。日本特有の花とかで初めて目にしたが、斜面に伸び
た茎に大きな花弁をつけ、金色の花芯が絶妙だ。 数個が群生してる様は何か神秘的な
ムードに浸れる。

 今が旬だろうか多種類の花をカメラに納め、やがて平笠不動小屋に到着し休憩を取る。
目の前にすり鉢を伏せたような山頂が一望でき、ハイマツの中を径がつづいている。この
小屋の周りにもシラネアオイやシナノキンバイ等が咲き、低木の桜に花が付いている。

    

 

モミジカラマツ

ミヤマオダマキ

シラネアオイ

イワブクロ (外輪山の砂礫に群生)

ミヤマハンショウヅル

ミヤマウスユキソウ&ヨツバシオガマ

 

<褐色>

 奇岩やハイマツを下に見て山頂へと登る、時々足を止めて息を整える。雲が吹き前方の
山頂が遠くなる時もあるが、足元が小砂利や茶褐色の砂に変り、噴火口のお鉢のへりに
出た。外輪山の中に火口丘があり、お鉢や焼け色の岩稜が特異な山容を見せる。 仰ぎ
見てきた大きな山も山頂に立てば視野に納まった。

 山頂には祠があり、そこで昼食にする。砂礫の丘みたいな山頂、信仰登山の昔に建てた
のか数間おきに石碑が外輪山の渕にある。一時間程で周回できるらしいが、南側の八合
目避難小屋方面から下山することにして山頂を後にする。

    

 

お鉢の縁に着く (右山頂 左焼走り口)

山頂 (後方に三角点)

不動平 (山頂、御神坂、馬返しルートが交差)

外輪山と火口丘

 

<白と黄>

 外輪山から砂礫の径を下ると不動平に着く。径の脇には上りに見た花以外にも珍しい
ミヤマキスミレやチングルマ、ウスユキソウなどが咲いている。

 避難小屋は有人でトイレに協力金を入れて馬返し方面へ進む。当初は御神坂コースを
予定していたが、不動平からの径路を間違ったようだ。時間的には余計になるが引返す
のも億劫になり、そのまま下り3時間の馬返しコースへと降りる。

 緑が覆う裾野や牧場が俯瞰できるが足元はもろく、慎重に下る。 焼走りの上りと違い
岩が重なり、ガレ場が連続する。 新道と旧道に分かれるが違いも分らず旧道に入る。
これぞ岩手の山だと口に出る、疲れも増してくる。 二合目半辺りで新旧が合流し、漸く
木々の径を辿る。

 雑木に混じり、ヤマボウシの木が真っ白な花を一面につけている。 足元には黄色い
ホトトギスの花がある、関西では既に終わっているが再度旬の花に出遭う。

 「
ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」石川啄木が
詠んだ岩手山、広大な裾野に恵みをもたらし、重厚な岩峰として鎮座している。 この
山に登りくだってその気持ちに触れる事ができた。

     

 

ミヤマキスミレ

チングルマ (夏姿)

タマガワホトトギス

ウコンウツギ

エゾツツジ

馬返し口(駐車場)

club-tanu club-tanu club-tanu  紀行文・写真集 総合目次へ戻る club-tanu club-tanu club-tanu